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海外旅行紀行・戯言日記

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魔法使いの弟子

1963年発行の“ドイツ文学案内”で手塚富雄氏は次のように述べています。

ゲーテとシラーの協力が直接現れたものにバラード(物語詩)というジャンルがあり、両詩人は競争して次々に名作を生み出しました。

数あるバラードの名作にゲーテの「魔法使いの弟子」があります。これにはデュカが曲を付けディズニーの名画“ファンタジア”の中でミッキーマウスが弟子を演じていますので、知っておられる方も多いと思います。

魔法使いの弟子が、老先生のお出掛けの留守に、自分は老師のすることはよく覚えていて霊どもを呼び出すことが出来ると自慢して、呪文を唱えます。その呪文に答えて、古箒が下男のように立ち働いてせっせと水を汲んで来ます。水が盤に一杯になるのですが、弟子は箒の動きを止めて元の箒に返す呪文を忘れてしまっているのです。
段々、家は水浸しになる。あせって箒をまさかりでで真っ二つにするが、箒の下男は今度は二人になって水を運ぶ。弟子は悲鳴をあげて助けを求める。
そうすると、丁度帰宅した老師匠は呪文を唱えて、古箒の動きををピタリと止めるのです。

ゲーテは別に正面切って教訓を与えようとしてはいないのですが、我々はこれから様々なことを考えない訳には行きません。
全ての力を本当に有効に使うには、それを動かすことが出来ると同時に、その動きを止めることが出来なければならない。つまり制御作用が無い場合には、その結果は恐ろしいことになるのである。
下手な政治家や指導者にはその例が多いであろう。みだりに兵力を動かして収拾のつかない大事態に立ち至らせ、泥沼にはまり込んだのは嘗ての日本軍人であった。彼等は美辞麗句を並べ、大言壮語したこの魔法使いの弟子と同じ道化者であった。


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